Wincent W-5Aのレビューを書いていたとき、手元のペアの一方がやや高く、硬く、明るく聴こえることに気づきました。はっきりした音名の差ではなく、叩き比べると「あれ?」と感じる程度の違いです。この記事は、その体感を録音と解析で確認しようとした記録です。
W-5Aで感じた体感差が録音・FFT・SonicDiff上にどう見えるかを起点に、同じ方法でVic Firth 5A・Vic Firth AJ2も比較しています。Tone SpectraのFFT表示で周波数成分の傾向を確認し、SonicDiffで2本の差がどの帯域に出ているかを見ながら、ペア差をどう読むかを整理します。
結論から言うと、スティックのペア差は「基音の高さ」だけで判断するよりも、高域共振、アタック成分、減衰の違いまで含めて見る方が、実際の聴感に近いと感じました。
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スティックのペア差は、ピッチだけで決まるのか
スティックを選ぶとき、「ペアのピッチが揃っているか」を気にする人は多いと思います。実際、2本を叩き比べたときに音程感が違うと、演奏中に違和感が出ることがあります。
ただ、今回の比較では、音名がはっきり変わるほどの基音差だけでなく、高域の出方やアタックの硬さが聴感差に影響しているように見えました。つまり「高く聴こえる」ことが、そのまま単純な基音差を意味するとは限らない、ということです。
FFTは周波数成分の全体像を確認するために、SonicDiffは2本の音の違いがどの帯域に出ているかを見るために使っています。どちらも、固有振動数を断定するためではなく、聴感差を説明する補助的な可視化として扱います。
今回比較したスティック
今回の比較対象は、手元にある3種類のスティックです。いずれもメーカーやモデル全体を代表するサンプルではなく、あくまで今回測定した個体として扱います。
| モデル | 比較内容 | 記事内で見るポイント |
|---|---|---|
| Wincent W-5A | Pair-A / Pair-B | 高域成分、アタック感、Tone SpectraとSonicDiffで見える差 |
| Vic Firth 5A | 2本のペア比較 | 定番5Aで、2本の差がどの帯域に出るか |
| Vic Firth AJ2 | 2本のペア比較 | 軽く感じるモデルで、音色差がどう見えるか |
測定では、できるだけ同じ条件で叩き、録音した音を比較しています。ただし、人間が叩いている以上、完全に同一の打点、強さ、角度に揃えることはできません。そのため、結果は精密な実験データではなく、個人環境での観測として読みます。
測定と読み取りの前提
今回見ているのは、主に次の3つです。
- Tone SpectraのFFT表示で、周波数成分の傾向を見る
- SonicDiffで、2本の音の差がどの帯域に出ているかを見る
- 実際の聴感として、高く、硬く、明るく感じるかを確認する
FFTのピークは、目視読み取りや録音条件の影響を受けます。SonicDiffの差分表示も、最も強く見える帯域をそのまま基音や固有振動数として断定するものではありません。ここでは「どの帯域の違いが聴感差につながっていそうか」を見るための補助資料として扱います。
Wincent W-5A Pair-A / Pair-Bの比較
まずは、Wincent W-5AのPair-AとPair-Bを比較します。W-5Aのレビュー記事で「片方がやや高く、硬く聴こえる」と触れた体感の対象がこのペアです。その体感が録音と解析上でどう見えるかを確認します。なお、この結果は今回測定した個体の観察であり、W-5A全体の傾向を示すものではありません。
手元のペアでは、低〜中域の代表的な成分はおおむねA4、440Hz付近に見えました。一方で、聴感上はPair-Aの方がやや高く、硬く、明るく聴こえる傾向がありました。
Tone Spectraでは、2本の周波数成分を並べて確認できます。ここでは、単一のピークだけで判断するのではなく、低〜中域と高域のバランスを見ます。
SonicDiffでは、Pair-A側の高域成分が強く見える箇所がありました。聴感上の「高く、硬く、明るい」という印象は、基音差だけでなく、高域成分やアタック成分の違いとして説明する方が自然に感じます。

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Wincent W-5Aで見えたこと
- 2本の差は、単純な音程差だけでは説明しきれない
- Pair-Aの方が高域成分やアタック感が強く感じられた
- 聴感上の差は、高域共振や減衰の違いとして見る方が自然だった
Vic Firth 5Aの比較
次に、Vic Firth 5Aの2本を比較します。Vic Firthは定番スティックとして使っている人も多く、ペア差を考えるうえで基準にしやすいモデルです。
Tone Spectraでは、2本の音を同じ画面で比較します。代表ピークだけでなく、高域の出方や、アタック直後に見えやすい成分も含めて確認します。
この比較でも、差を「どちらが良いか」とすぐに判断するのではなく、2本の音色差がどの帯域に出ているかを見ます。スティックは同じモデルでも、木材の密度、重量、加工、使い込み具合によって、叩いたときの反応が変わる可能性があります。

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Vic Firth 5Aで見るポイント
- 定番モデルでも、手元の2本に小さな音色差が出る可能性がある
- 代表ピークだけでなく、高域成分の違いも確認する
- 結果はメーカー全体の品質差ではなく、今回の個体差として扱う
Vic Firth AJ2の比較
Vic Firth AJ2は、今回の比較対象の中では軽く感じられるモデルです。重さや振り上げたときの感覚が違うと、叩いた瞬間のアタックや余韻の感じ方も変わることがあります。
Tone Spectraでは、AJ2の2本を同条件で比較します。細かな差がある場合でも、単一の数値だけで結論を出さず、FFT表示と聴感を合わせて確認します。
軽く感じるスティックでは、音の立ち上がりや減衰の印象が、重いモデルとは違って聴こえることがあります。AJ2の比較でも、ペア差を音程だけでなく、アタック感と高域成分の違いとして確認します。

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Vic Firth AJ2で見るポイント
- 軽く感じるモデルでは、アタックや減衰の印象も比較しやすい
- ペア差は、重さだけでなく音色差として現れる可能性がある
- FFTとSonicDiffは、聴感差の理由を考えるための補助資料として見る
SonicDiffで見える差は、どう読むべきか
SonicDiffの表示は、2本のスティックの音がどの帯域で違って見えるかを確認するためのものです。差分が強く出た帯域があっても、それをそのまま「このスティックの固有振動数」と断定することはできません。
今回のような比較では、SonicDiffは「聴感上の違いを説明するための地図」として使うのがちょうどよいと感じます。高く聴こえる、硬く聴こえる、明るく聴こえるといった印象が、どの帯域の違いと関係していそうかを見るための補助です。
特にスティックの音は、叩く強さ、打点、マイク位置、部屋の響きによって変わります。1回の録音や1枚の解析画像だけで優劣を決めるのではなく、複数の手がかりを合わせて考える必要があります。
重心位置と振り上げたときの体感
スティックの扱いやすさは、音だけでなく、持ったときの重さや振り上げたときの慣性にも左右されます。重心位置が近くても、総重量やグリップ位置が違えば、実際の体感は変わります。
たとえば、重心位置だけを見ると近いモデルでも、総重量が重ければ振り上げたときに重く感じることがあります。逆に、重量が軽くても先端側に重さを感じると、前に引っ張られるような感覚が出ることがあります。
このため、スティック選びでは「重心がどこか」だけでなく、「その重心をどの重量で感じているか」「普段どこを握っているか」まで含めて考える方が実用的です。
ペア差を見るときの考え方
今回の比較から、スティックのペア差を見るときは、次のように整理すると分かりやすいと感じました。
- 音名が変わるほどの差があるかを見る
- 高域成分やアタック感に差があるかを見る
- 余韻や減衰の違いを聴く
- 重さ、重心位置、振り上げたときの感覚を合わせて見る
- 1つの数値だけで、良し悪しを決めない
特に「片方だけ高く聴こえる」と感じたときは、基音そのものが大きく違うのか、それとも高域成分やアタックが強く出ているのかを分けて考えると、違和感の理由を見つけやすくなります。
今回の測定で注意したいこと
今回の測定は、少数サンプルを使った個人環境での観測であり、メーカーやモデル全体の品質差を示すものではありません。あくまで手元のペアを同条件で比較した範囲では、代表ピーク差だけで明確な優劣を判断するよりも、高域共振、アタック成分、減衰の違いが聴感上の差として現れている可能性がありました。FFTやSonicDiffの表示は、固有振動数を断定するためではなく、聴感差を説明するための補助的な可視化として扱っています。
また、録音環境や叩き方によって結果は変わります。今回の結果は、スティック選びの絶対的な答えではなく、自分の手元のペアを確認するときの見方の一例です。
補足:SonicDiff / FFT / 体感表現の読み方
この比較では、SonicDiffやFFTの表示を、耳で感じた違いを整理するための補助情報として扱っています。ここでは、数値や体感表現を読むときに誤解しやすい点を補足します。
補足:SonicDiff / Tone Spectra / 体感表現の読み方
SonicDiffは、2つの録音を比べたときに、差がどの帯域に出ているかを見るための補助表示です。Tone Spectraは、FFTをもとに、録音された音にどのような周波数成分が含まれているかを見やすくした表示です。
どちらも、耳で感じた違いを整理するための材料として使っています。表示上で差が見えても、それだけでスティックの固有振動数や、どちらが優れているかを断定するものではありません。
今回の結果は、メーカーやモデル全体の品質差を示すものですか?
いいえ。今回の記事は、手元にある個体を同じ条件で比べた範囲での記録です。
測定本数は限られており、録音環境、叩く強さ、打点、マイク位置などの影響も受けます。そのため、メーカー全体やモデル全体の品質差、品質管理の優劣を示すものではありません。
あくまで、今回測定した個体差として読んでください。
「高く聴こえる」「軽く感じる」は、どう受け止めればよいですか?
「高く聴こえる」「軽く感じる」といった体感は、スティックを選ぶうえで大事な手がかりです。ただし、高く聴こえる理由が、必ずしも基音差だけとは限りません。
高域成分、アタック感、倍音の出方、減衰、重心、重量など、複数の要素が重なって体感につながる可能性があります。
今回のAJ2は、重心位置が175.25mm、重心比率が約0.432です。この数値は、軽く感じる体感を考える補助情報にはなります。ただし、重心値だけで音の違いを説明することはできません。
どんな人に役立つ比較か
この比較は、次のような人に役立つと思います。
- 同じペアなのに、片方だけ音が高く感じることがある人
- スティックのピッチ差を、もう少し具体的に考えたい人
- FFTやSonicDiffを、演奏感の説明にどう使えるか知りたい人
- スティック選びで、重さや重心だけでなく音色差も気にしたい人
逆に、メーカーごとの優劣や、モデル全体の品質差を知りたい人には、この測定だけでは情報が足りません。今回の記事は、あくまで手元のペアを比べた個人測定として読んでください。
関連して読みたい記事
Wincent W-5Aそのものの使い心地や長期使用レビューは、こちらの記事で詳しくまとめています。
音を測る、比べる、可視化するという意味では、tune-bot StudioレビューやDanmarビーター比較記事とも近いテーマです。スティックだけでなく、機材の音色差を考えるときの参考になります。
チューニングの基準ピッチを数値で確認しながら音作りを進めたい場合は、tune-bot Studioの使い方やレビューをまとめた記事も参考になります。
スティックの個体差だけでなく、バスドラムのビーターを変えたときの音や打感の違いが気になる場合は、DanmarのDM-205(ウッド)とDM-206(フェルト)を録音して比べたレビューも参考になります。
まとめ
ドラムスティックのペア差は、単純なピッチ差だけでは説明しきれないことがあります。今回の手元の比較では、Wincent W-5A、Vic Firth 5A、Vic Firth AJ2のいずれも、FFTやSonicDiffを通して見ることで、高域成分やアタック感の違いを考える手がかりが得られました。
スティックを選ぶときは、重さ、重心、太さ、握り心地だけでなく、叩いたときに自分がどう聴こえるかも大切です。気になるペア差がある場合は、片方だけを見て判断せず、2本を同じ条件で叩き比べると、違和感の理由が見えやすくなります。
そして、解析表示は結論そのものではなく、耳で感じた違いを整理するための補助線です。数値や画像に寄りかかりすぎず、実際の演奏感と合わせて見ることが、スティック選びではいちばん大事だと思います。




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